圏外でも助けを呼べる!iPhone衛星経由緊急SOSの使い方完全ガイド【2024年7月日本対応】

  • 公開日:2025/12/6
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登山やキャンプ、あるいは予期せぬ災害時。スマートフォンの画面に「圏外」の文字が表示されたとき、不安に駆られた経験はありませんか?

これまで、携帯電話の電波が届かない場所では、助けを呼ぶ手段は限られていました。しかし、2024年7月30日、Appleは日本国内でiPhoneの「衛星経由の緊急SOS」機能の提供を開始しました。これにより、携帯電話通信やWi-Fiが繋がらない場所でも、空が見えていれば人工衛星を経由して緊急通報サービス(110番、119番、118番)に助けを求めることができるようになったのです。

💡 衛星通信は「空の中継基地」

普段のスマホは地上の「基地局」という電波塔とやり取りしています。山奥で圏外になるのは、この基地局から遠すぎるためです。一方、衛星通信は、はるか上空を飛んでいる人工衛星が「空の中継基地」の役割を果たします。地上の設備に頼らないため、山岳地帯や海上、災害で基地局が壊れた場所でも、空さえ開けていれば通信できるのです。

この記事では、アウトドア好きの方や防災意識の高い方に向けて、この「命綱」とも言える新機能の仕組みや使い方、事前にやっておくべき設定について、専門用語をなるべく使わずにわかりやすく解説します。

注:この記事は一般的な機能解説です。実際の緊急時には、各自の安全確保を最優先で行動してください。また、本記事における開始日や無料期間などの条件は、Apple公式の2024年7月時点の発表に基づきます。最新の情報や無料期間終了後の料金体系については、必ずApple公式サイト等でご確認ください。

⚠️ この機能の重要な制限

この機能は非常に便利ですが、万能ではありません。音声通話はできず、テキストメッセージのみです。また、空が開けている場所でないと使えません。屋内、深い谷底、鬱蒼とした森の中では接続できない場合があります。さらに、通信速度は非常に遅く、送信にかかる時間は環境により大きく変わります。目安として、理想条件では数十秒、木の葉などの遮蔽物があると1分以上かかることもあります。過信せず、基本の安全対策(モバイルバッテリー携行、ココヘリ等の捜索サービス検討)も併せて行いましょう。


対象機種と利用条件|あなたのiPhoneは使える?

まずは、この機能を利用するために必要な条件を整理しましょう。いざという時に「自分の機種は対応していなかった」とならないよう、事前の確認が大切です。

対象機種と対応OS

「衛星経由の緊急SOS」を利用できるのは、iPhone 14以降の全モデルです。

※補足:2024年7月30日の日本での提供開始時点では、iPhone 14とiPhone 15が対象機種でした。2025年12月時点では、Apple公式サイトで「iPhone 14以降(全モデル)」と表現されており、iPhone 16シリーズなどの新しいモデルも含まれます。お使いの機種が対応しているかは、必ずApple公式サポートページ(iPhoneで衛星経由の緊急SOSを使う)で最新情報をご確認ください。

これらの機種で、iOS 17.6以降にアップデートされている必要があります(2024年7月の日本提供開始時点の最低要件。以後のiOS更新で要件が変わる可能性があります)。まだアップデートがお済みでない方は、「設定」>「一般」>「ソフトウェアアップデート」から最新の状態にしておきましょう。

料金と無料期間

このサービスは、iPhone 14以降の対応モデルをアクティベーション(利用開始)した日から2年間無料で提供されます。

※重要:無料期間の起算点は「アクティベーション日」です。たとえば、iPhone 14を2023年にアクティベーションした場合、そこから2年間が無料期間となります。本記事における開始日や無料期間などの条件は、Apple公式の2024年7月時点の発表に基づきます。国・地域によって条件が異なる場合があります。最新の情報や無料期間終了後の料金体系については、必ずApple公式サイト等でご確認ください。


衛星経由の緊急SOSの仕組み|どうやってつながるの?

通常、スマートフォンは地上の「基地局」と電波をやり取りして通信します。山奥などで圏外になるのは、この基地局からの電波が届かないためです。

一方、この新機能では、はるか上空を飛んでいる人工衛星とiPhoneが直接通信を行います。地上の設備に依存しないため、山岳地帯や海上、あるいは災害で地上の基地局がダウンしてしまった場合でも、空さえ開けていれば通信が可能になるのです。

詳しい仕組みや提供開始の背景については、Appleの公式ニュースリリース(衛星経由の緊急SOS、本日提供開始)もご参照ください。

通常の通信(基地局)

仕組み:地上の基地局(電波塔)と通信

メリット:高速で安定した通信

デメリット:山間部や災害時に圏外になりやすい

衛星通信(新機能)

仕組み:上空の人工衛星と直接通信

メリット:圏外でも空が見えれば通信可能

デメリット:通信速度が遅く、テキストのみ


実際の使い方|圏外で助けを呼ぶ5ステップ

では、実際に圏外でトラブルに遭った際、どのように助けを呼べばよいのでしょうか。以下の手順を覚えておきましょう。

※この記事は一般的な機能解説であり、具体的な行動判断は各自の安全確保を最優先で行ってください。

ステップ1: いつも通り119番などに電話をかける
ステップ2: 圏外の場合「緊急テキスト」をタップ
ステップ3: 質問に答えて状況を伝える
ステップ4: iPhoneを空に向けて衛星を探す
ステップ5: 専門スタッフとチャットで連絡

ステップ1:いつも通り119番などに電話をかける

緊急事態が発生したら、まずは通常通り119番(消防・救急)、110番(警察)、118番(海上保安庁)に電話をかけてみましょう。もし、わずかでも携帯電話の電波が入れば、そのまま電話がつながります。

ステップ2:圏外の場合「緊急テキスト」をタップする

電話がつながらず圏外だった場合、通話終了後の画面に「接続していません。衛星経由で緊急テキストの送信を試してください」といったメッセージが表示されます。画面右下に現れる「緊急テキスト」ボタンをタップし、続いて「緊急通報の報告」を選択します。

ステップ3:質問に答えて状況を伝える

画面にいくつかの質問が表示されます。

  • 「どのような緊急事態ですか?(遭難、ケガ、病気など)」
  • 「誰が助けを必要としていますか?」
  • 「怪我の状態は?」

といった質問に対し、選択肢をタップしていくだけで状況を報告できます。これは、衛星通信のデータ容量を節約し、素早く情報を送るための工夫です。

ステップ4:iPhoneを空に向けて衛星を探す

質問への回答が終わると、iPhoneが衛星を探すモードになります。画面上の指示に従って、iPhoneを空に向けます。画面には衛星の方向がレーダーのように表示され、正しい方向に向くと緑色の表示になります。

接続が確立されると、以下の情報が自動的に送信されます。

自動送信される情報

  • 質問への回答内容
  • 位置情報(高度含む)
  • iPhoneのバッテリー残量
  • メディカルID(事前に設定している場合)

ステップ5:専門スタッフとのチャット

情報が送信されると、Appleのトレーニングを受けた専門スタッフがいる「衛星中継センター」につながります。スタッフとのチャット(テキストメッセージ)画面が開くので、必要に応じて追加の質問に答えましょう。

このスタッフが、ユーザーに代わって日本の消防や警察などの緊急通報サービスへ連絡を行い、救助を要請してくれます。


デモモードで事前練習しよう|いざという時のために

「いざという時に使いこなせるか不安…」という方のために、iPhoneにはデモモード(テスト機能)が搭載されています。実際の緊急通報には繋がりませんので、登山やキャンプに行く前に必ず一度試しておきましょう。

デモモードの手順

1. 屋外に出る(空が広く見渡せる場所へ)
2. 設定アプリ > 緊急SOSをタップ
3. 画面下部の「デモを試す」をタップ
4. ガイダンスに従ってモバイル通信を一時オフ
5. 画面の指示に従ってiPhoneを衛星の方向に向ける
6. 接続成功後、デモ用チャット画面で練習

デモモードでは、実際の衛星通信の流れを体験できます。接続に成功すると、デモ用のチャット画面が表示され、通信の練習ができます。


事前設定が命を救う|メディカルIDと緊急連絡先

この機能を最大限に活かすために、「ヘルスケア」アプリで以下の設定をしておくことを強くおすすめします

メディカルIDの設定

持病、アレルギー、服用中の薬、血液型などを登録しておくと、緊急通報時に自動で送信され、救急隊員に重要な医療情報を伝えられます

メディカルIDに登録すべき情報

  • 持病(糖尿病、心臓病、喘息など)
  • アレルギー(薬物、食物など)
  • 服用中の薬
  • 血液型
  • 臓器提供の意思

緊急連絡先の設定

家族などの連絡先を登録しておくと、緊急SOSを使用した際に、その事実と現在地が自動的に家族にも通知されます

設定方法:「ヘルスケア」アプリ > 「メディカルID」> 「緊急連絡先を追加」


どんなシーンで役立つ?|具体的な利用例

登山・ハイキング

最も想定される利用シーンです。山間部は地形の影響で電波が入りにくい場所(不感地帯)が多く存在します。滑落して動けなくなった場合や、道に迷ってしまった場合に、衛星経由で救助を呼ぶことができます。

海上のアクティビティ

陸から離れた海上でも、携帯電話の電波は届かなくなります。釣りやボートなどでエンジントラブルが起きたり、漂流してしまった際にも、陸から一定の距離(見通しが良ければ)であれば通信できる可能性があります。

大規模災害時

地震や台風などの災害により、地上の基地局が停電や倒壊で使えなくなることがあります。そのような「通信障害」が発生した際でも、衛星通信なら空さえ見えれば外部と連絡を取る手段として機能します。

「探す」アプリでの位置情報共有

緊急事態でなくても、「探す」アプリを使って、衛星経由で自分の位置情報を家族に送ることができます。

「これから電波の届かないエリアに入るけど、無事だよ」と現在地を送っておけば、待っている家族も安心できます。衛星経由の位置情報共有は約15分に1回送信可能です。登山中に定期的に位置情報を更新するといった使い方も可能です。

※補足:位置情報の送信頻度や機能の詳細は、Apple公式の「探す」アプリのガイド(衛星経由で位置情報を送信)をご参照ください。


注意点と限界|万能ではないことを理解しよう

非常に強力な機能ですが、万能ではありません。以下の限界を理解しておくことが重要です。

⚠️ この機能の制約と限界

空が開けている必要がある:衛星と通信するには、空がはっきりと見える必要があります。深い谷底、高い建物の間、鬱蒼とした森の中(木の葉が茂っている場所)などでは、接続できなかったり、接続に時間がかかったりすることがあります。

通信速度が非常に遅い:普段の4G/5G通信とは異なり、データ通信速度は非常に低速です。送信にかかる時間は環境により大きく変わります。目安として、理想条件では数十秒、木の葉などの遮蔽物があると1分以上かかることもあります。

音声通話はできない:この機能はテキストメッセージ(文字)と位置情報の送信のみに対応しています。衛星電話のように音声で通話することはできません。

屋内では使えない:基本的に屋外で利用する機能です。建物の中では衛星の電波を受信できません。

一部の利用制限区域では使えない可能性がある:電波天文観測施設周辺など、日本国内の「衛星サービス利用制限区域」では使用できない場合があります。詳細はApple公式のユーザガイド(衛星経由の緊急SOSを使用する)をご確認ください。


まとめ:家族で備える「圏外でもつながる」時代

iPhoneの「衛星経由の緊急SOS」は、これまで「圏外」と諦めていた場所でも助けを呼べる画期的な機能です。登山やアウトドアを楽しむ方にとっては、まさに命を守るお守りと言えるでしょう。

この記事では、以下の内容を解説しました:

  • 対象機種と条件:iPhone 14以降の全モデル、iOS 17.6以降(2024年7月の開始時点の最低要件)、アクティベーション日から2年間無料

    2024年7月30日の日本対応開始時点ではiPhone 14/15が対象でしたが、2025年12月時点では「iPhone 14以降(全モデル)」が対応しています。最新の情報は必ずApple公式サイトで確認してください。

  • 使い方の5ステップ:通常通り電話 → 緊急テキスト → 質問回答 → 衛星探索 → スタッフとチャット

    デモモードで事前練習しておくことが大切です。

  • 事前設定:メディカルIDと緊急連絡先の登録で、より効果的に

    持病やアレルギー情報は救助時に命を救います。

  • 利用シーン:登山、海上、災害時、位置情報共有など

    「探す」アプリで家族に現在地を約15分に1回送ることも可能です。

  • 制約と限界:空が見える場所限定、通信速度が遅い(環境により大きく変動、目安として理想条件で数十秒、障害物がある場合は1分以上)、音声通話不可、屋内不可、一部の利用制限区域では使用不可の可能性

    過信は禁物です。モバイルバッテリーの携行、ココヘリ(会員制捜索支援サービス)などの捜索サービスへの加入など、基本の備えは変わりません。

ぜひこの機会に、ご家族で以下のことを話し合ってみてはいかがでしょうか。

家族で確認すべきこと

  • iPhoneの機種確認:家族の誰がiPhone 14以降を持っているか
  • 緊急連絡先の登録:お互いを緊急連絡先に設定しているか
  • デモの実施:一緒にデモモードを操作して体験してみる
  • 防災ルールの確認:「もし連絡が取れなくなったら、どのタイミングで救助を要請するか」などのルール決め

テクノロジーを正しく理解し、準備することで、アウトドアや万が一の災害時も、より安全に、安心して過ごすことができます。まずは今すぐ、お手元のiPhoneで設定を確認してみてくださいね。

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